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斎藤英男の経歴と功績:トーモク元社長が築いた20年の軌跡と経営哲学

斎藤英男の経歴と功績:トーモク元社長が築いた20年の軌跡と経営哲学

斎藤英男氏は、段ボール・紙器事業を中核に、高品質な木質パネル住宅「スウェーデンハウス」事業も展開する株式会社トーモクの経営を長きにわたり牽引してきた人物です。

1969年に入社して以来、工場長や取締役生産部長など様々な要職を歴任し、1998年4月から2018年6月までの約20年間にわたって代表取締役社長を務めました。その後は代表取締役会長として同社の経営を支え続けてきましたが、2022年6月23日付で代表取締役会長を退任し、相談役に就任しました。

この記事では、斎藤氏がトーモクで築き上げたキャリアの道のり、社長在任中の具体的な功績、そして彼の経営哲学と人物像について、詳しく解説します。

斎藤英男の経歴:トーモク入社から社長就任までの歩み

まずは、斎藤英男氏の基本情報を確認しましょう。

斎藤英男-株式会社トーモク 相談役メッセージより斎藤英男-株式会社トーモク 相談役メッセージより
名前 斎藤 英男(さいとう ひでお)
生年月日 1945年2月9日
出身 広島県江田島市
学歴 神奈川大学
職業 株式会社トーモク 相談役

斎藤英男氏は1945年に生まれ、1969年12月に株式会社トーモクへ入社しました。創業家出身ではなく、社員としてキャリアを積み重ねてトップの座に就いた経緯は、同社の自由な社風と実力主義を示すものといえるでしょう。

入社後、生産現場での経験を深めながら着実に昇進し、1986年には岩槻工場長に就任しました。さらに1990年6月には取締役生産部長、1997年5月には常務取締役へと昇格し、経営の中枢に関わるようになります。

そして、1998年4月、満を持して同社の代表取締役社長に就任を果たしました。この経歴は、製造現場から経営全般に至るまで、同社の事業構造を深く理解していたことを示しており、長期的なリーダーシップの基盤となりました。

2018年6月には代表取締役会長に就任して引き続き経営を支えましたが、2022年6月23日をもって同職を退き、現在は相談役として同社の事業に関わっています。

株式会社トーモクの事業基盤と歴史

株式会社トーモクは、1940年の創業、1949年の設立から続く歴史を持つ企業です。設立当初は缶詰用木箱のメーカーでしたが、その後、段ボール事業へと転換し、時代の変化に合わせて事業を拡大してきました。

主要な事業は、現代の物流に欠かせない段ボール事業や紙器事業、そして高品質な輸入木質パネル住宅の販売・施工を行う住宅事業(スウェーデンハウス)の3本柱で構成されています。

特に段ボール事業では、関東を中心としつつ、九州から北海道まで全国規模で事業を展開し、顧客の多様なニーズに応える供給体制を確立しています。

斎藤英男が社長時代に残した功績と成長戦略

斎藤英男氏が代表取締役社長を務めた約20年間は、トーモクグループの収益力強化と事業領域の拡大が積極的に推進された期間でした。

社長退任時の株主総会資料においても、彼の「当社グループの収益力の強化や事業領域の拡大に多大な功績とリーダーシップを発揮してまいりました」という功績が言及されています。

段ボール・紙器事業の強化とベトナムなどへの海外展開

社長在任中、斎藤氏はコアビジネスである段ボール・紙器事業の競争力強化に注力しました。

国内では、1998年4月に協進社より紙器事業を譲り受け千葉紙器工場を開設したのを皮切りに、仙台紙器工業や日清紙工(現・トーシンパッケージ)などを子会社化し、積極的に事業再編と拠点整備を行いました。

特に注目すべきは、アジア地域への積極的な事業展開です。段ボールの海外事業の更なる拡大を目指す中で、既存のアメリカ西海岸地区の拠点に加え、大きな経済成長が見込まれる東南アジア地域を新たな戦略拠点と定めました。

その具体的な動きとして、2013年4月にはベトナムに子会社「TOMOKU VIETNAM CO., LTD.」を設立することを決定しました。これは、日系企業の進出が著しいベトナムにおいて、段ボール工場を設立し、現地の旺盛な需要を取り込むための重要な一手でした。

このようなグローバルな視点に基づく積極的な海外展開は、斎藤氏のリーダーシップの下で、トーモクグループの事業基盤を多角化し、世界的な競争力を高めるために不可欠な戦略でした。

また、国内段ボール事業においては、原材料価格の高騰といった逆風があった時期(平成30年3月期など)においても、飲料関係の需要増加などに支えられ、生産量を前年より上回る実績を達成しています。

こうした厳しい経営環境下で収益力を維持するため、働き方改革を強力に推進し、IoTを活用した販売活動や輸送業務の効率化を図るなど、時代の変化に合わせた生産性向上への取り組みを積極的に指揮しました。

さらに、研究開発機能の強化を図るために中央研究所の機能を整備し、岩槻工場には社員の働き方を支援するインタラクティブなオフィスを新設するなど、技術と人材への投資を惜しまなかったことがうかがえます。

住宅事業「スウェーデンハウス」のブランド確立と価値向上

1984年に輸入販売を開始したスウェーデン製木質パネル住宅の事業は、斎藤社長時代にその価値がより高まりました。トーモクが創業当初から木材を扱ってきたノウハウと、段ボール事業で培った生産管理技術を融合させ、製造から販売、施工までを一貫して行う体制を強化しました。

特に「スウェーデンハウス」は、高断熱・高気密といった高い機能性を持つことで知られ、その品質は市場で高く評価されています。2013年にはスウェーデンハウスを完全子会社化するなど、住宅事業をグループの中核事業として位置づけ、成長を加速させました。

斎藤氏は、住宅事業の成長戦略として、省エネ性能に注力した商品展開を推進しました。また、同社が「オリコン顧客満足度ランキング」の総合で4年連続1位の評価を獲得した際には、その顧客からの高い評価を積極的にアピールし、顧客の信頼と満足度を基盤としたブランド戦略を重視したことがわかります。

斎藤英男の人物像と経営哲学:「オリジナリティー」と「考動」

斎藤氏の企業人としての核となる価値観は、彼が相談役メッセージで発信している内容から深く読み取ることができます。

彼は、トーモクの強みを「業界トップメーカーとしての技術・信頼・ノウハウを結集した総合力」だと定義しており、専業メーカーとしてのオリジナリティーの追求を最も重要視していることがうかがえます。

荒地を金に変える「能動的な人材」への期待

斎藤氏は、一見ローテクに見える段ボール事業を「ハイテクで作る。だからこそ面白い」と表現しており、技術革新への情熱と、常識にとらわれない柔軟な思考を持つ人物だと考えられます。

彼は、困難な状況を切り開き、成長を促す姿勢を「砂を変じて金たらしめる」(砂漠のような荒地を一生懸命耕して良い作物ができる土地にする)という独自の言葉で表現しています。この言葉は、現状に満足せず、社員一人ひとりの努力と成長を通じて、企業価値を高めていくという強い信念を示しているのではないでしょうか。

この信念に基づき、彼は社員に対して「能動的な人材」であることを強く求めています。これは、人に言われるのを待つのではなく、「こんなことをやってみたい」と自ら考え、行動(「考動」)を起こせる人材を指しています。

また、「失敗も良し。七転び八起きを繰り返し、当事者の熱き心をもってひたすらトライ&エラーをしていく」という発言からは、失敗を恐れずに挑戦を続ける姿勢を推奨する、非常にチャレンジングで寛容な社風を育ててきたことが推測されます。

若手への機会提供と真剣勝負の教育

長年にわたりトーモクのトップを務めた斎藤氏は、若い人にもどんどん仕事をやらせてくれる、任せてくれる、チャレンジさせてくれるという同社の自由闊達な風土を高く評価しています。

彼のメッセージ全体から、彼は社員の可能性を信じ、仕事を通じて成長し「キラリと光る人材=金」になってもらいたいという、教育者としても真剣な思いを持っていることが伝わってきます。

彼のリーダーシップのもと、トーモクは単なる製造業としてではなく、社員の成長とオリジナリティーを重視する、革新的な企業文化を醸成してきたと考えられます。

株式会社トーモクの環境貢献と企業理念

トーモクグループのモットーは「環境に優しく、ビジネスと暮らしを包む」であり、斎藤氏のリーダーシップの下で、持続可能な社会への貢献を意識した経営が徹底されてきました。

主力製品の段ボールは、国内でほぼ100%という高いリサイクル率を誇り、環境負荷の低減に貢献しています。また、スウェーデンハウス事業においては、その高断熱・高気密な性能によって住宅の消費エネルギーを大幅に削減し、二酸化炭素の排出抑制を通じて地球環境保護に大きく貢献しています。この環境への配慮は、社会的な責任とコンプライアンスが求められる現代において、企業としての信頼性を高める基盤となっています。

さらに斎藤氏は、社会貢献性が高い企業であり続けるため、安全で品質の高い製品とサービスを提供し、労働環境の改善や人材育成にも積極的に取り組む姿勢を強調していました。

まとめ|トーモクの成長と信頼性を築いたリーダー

斎藤英男氏は、約50年にわたるトーモクでのキャリアを通じて、特に1998年から2018年までの約20年間、代表取締役社長として同社の飛躍的な成長と事業拡大を主導しました。

彼の功績は、中核である段ボール事業の国内・海外での競争力強化、特にベトナムへの子会社設立に代表されるアジア地域への戦略的な展開、そして高品質な住宅事業「スウェーデンハウス」の価値向上に集約されます。

厳しい経済状況下においても、IoT活用による生産性向上や働き方改革を推進し、事業の継続的な発展に尽力しました。彼の哲学は、「オリジナリティー」の追求と、失敗を恐れずに挑戦する「能動的な人材」の育成にあり、これがトーモクの自由闊達な企業文化を築き上げた源泉だと考えられます。

2022年6月以降は相談役に就任しており、その豊富な経験とリーダーシップをもって、引き続き同社の事業を支え続けています。

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