コンサルティング

【公認会計士】渡辺章博とは?GCA創業からフーリハン・ローキー会長に至る経歴と経営哲学

【公認会計士】渡辺章博とは?GCA創業からフーリハン・ローキー会長に至る経歴と経営哲学

公認会計士としての専門知識を武器に、長年にわたり国内外のM&A市場を牽引してきた渡辺章博(わたなべ あきひろ)氏。2004年に独立系M&Aアドバイザリーファーム「GCA株式会社」を創業し、現在は世界的投資銀行である「フーリハン・ローキー株式会社」の会長を務めています。

近年は東芝の非公開化を主導した前取締役会議長として、また第一三共やサッポロホールディングスなどの社外取締役として、日本のコーポレート・ガバナンス強化に尽力する実業家・プロフェッショナルとして広く知られています。

本記事では、渡辺章博氏の最新の経歴や経営統合の経緯、手がけてきた実績、そして彼のリーダーシップを支える経営哲学について詳しく解説します。

渡辺章博のプロフィール(公認会計士・実業家)

渡辺章博氏の基本的なプロフィールについてまとめました。日米の公認会計士資格を持ち、グローバルな舞台で活躍する彼のルーツを知るための基本情報となります。

渡辺章博氏(第一三共株式会社公式サイトより)渡辺章博氏(第一三共株式会社公式サイトより)

 

項目 内容
名前 渡辺 章博(わたなべ あきひろ)
生年月日 1959年2月18日
出身地 東京都武蔵野市(幼少期は福岡県北九州市)
最終学歴 中央大学商学部会計学科 卒業
主な資格 日本公認会計士、米国公認会計士
現職 フーリハン・ローキー株式会社 会長(2024年1月〜)
第一三共株式会社 社外取締役(2025年6月〜)
サッポロホールディングス株式会社 社外取締役 ほか
前職・歴任 株式会社東芝 取締役会議長(2022年6月〜非公開化完了まで)
GCA株式会社 代表取締役CEO ほか
主な著書 『M&Aのグローバル実務』(中央経済社)など

渡辺章博氏は、1959年に東京都武蔵野市で生まれました。父親が八幡製鐵(現・日本製鉄)に勤めていた関係で、小学校2年までは福岡県北九州市で育ちました。中央大学商学部に進学し、在学中の1980年に公認会計士第二次試験に合格するという優秀な成績を収めました。

渡辺 章博著『新版M&Aのグローバル実務〈第2版〉』

渡辺 章博著『新版M&Aのグローバル実務〈第2版〉』

1981年の卒業後は日本国内にとどまらずアメリカへ渡り、日本とアメリカの双方で公認会計士資格を取得。『M&Aのグローバル実務』をはじめとする著書も出版しており、現在は経営トップとしてだけではなく、大手企業のコーポレート・ガバナンス強化を担う社外取締役としても財界から高い評価を受けています。

渡辺章博の歩んだ軌跡:公認会計士からのキャリアと経歴

渡辺章博氏が現在に至るまで、どのようなキャリアを歩んできたのかを振り返ります。日本の公認会計士資格取得から始まり、単身での渡米、外資系コンサルティングファームでの躍進、そして自らの会社の創業という、プロフェッショナルとしての軌跡をご紹介します。

中央大学在学中の資格取得と単身での渡米

渡辺氏は中央大学商学部在学中の1980年に公認会計士第二次試験に見事合格し、平和共同会計事務所に入所しました。しかし、資格があるだけで「先生」と呼ばれる環境にとどまらず、真の実力を身につけるために海外進出を決意します。

1982年、言葉の壁がある中で単身アメリカへ渡り、ピート・マーウィック(現KPMG)のニューヨーク事務所に入所しました。そこで日系企業の米国進出サポートなどに携わり、実務を通じた泥臭いキャリアをスタートさせました。

KPMGでの活躍と日本人初の最年少パートナー就任

アメリカでの地道な努力が実を結び、1985年には米国公認会計士試験にも合格を果たします。現地のM&A部門で日本企業による米国企業買収のサポートなどに従事し、めざましい成果を上げました。

その実力が高く評価され、1990年には日本人として初めて、かつ最年少で同社のパートナーに就任するという快挙を成し遂げます。その後、1994年に日本へ帰国すると、KPMGコーポレートファイナンスの代表取締役パートナーに就任し、日本のM&A市場を牽引しました。

GCAの創業から世界的投資銀行との経営統合へ

渡辺氏は、会計とコンサルティング部門の独立性が求められる潮流の中、2004年に佐山展生氏らとともにM&Aアドバイザリーファーム「GCA」を創業しました。GCAはその後、日本有数のファームへと成長し、時価総額で世界のM&Aアドバイザリー企業のトップクラスの一角を占めるようになります。

大きな転機となったのは2021年10月です。GCAは米国に本拠を置く世界的投資銀行「フーリハン・ローキー(Houlihan Lokey)」との経営統合を実現し、同グループの一員となりました。

渡辺氏は統合後もリーダーシップを発揮し、2024年1月からはフーリハン・ローキー株式会社の会長(チェアマン・オブ・アジア・コーポレート・ファイナンス)に就任して現在も第一線で活躍を続けています。

M&A業界を牽引する渡辺章博の主な実績

M&Aのスペシャリストとして、渡辺章博氏がこれまでに残してきた代表的な実績を解説します。彼の手腕は自社の成長にとどまらず、グローバルなサービス展開や日本経済を支える大手企業のガバナンス強化にまで及んでいます。

独立系M&Aファーム「GCA」の上場とグローバル展開

渡辺氏の大きな実績として挙げられるのが、自ら立ち上げたGCAの飛躍的な成長です。

創業からわずか2年後の2006年に東証マザーズ上場を果たし、2008年には米国のサヴィアンとの経営統合、2012年には東証一部への市場変更を達成しました。

世界20拠点を超えるグローバルネットワークを構築し、JT、伊藤忠商事、パナソニックなど日本を代表する企業のM&AやPMI(買収後の統合支援)を成功に導きました。

「史上最大の非公開化」東芝の取締役会議長としての手腕

近年の実績の中で特に高く評価されているのが、コーポレート・ガバナンスにおける強力なリーダーシップです。

2022年6月に株式会社東芝の社外取締役に就任し、取締役会議長として経営再建を主導しました。国内外の株主や投資家との過酷な交渉を経て、2023年には日本経済史に残る「東芝の非公開化(上場廃止)」という大きな変革を完遂させました。

この東芝の案件は、海外の巨大インフラ企業でも実現し得なかった「グローバルで初の超大型非公開化モデル」として世界の市場からも注目を集め、その後の日本における健全なM&A活性化の大きなターニングポイントとなったと評価されています。

グローバル展開と幅広いM&Aサービスの構築

単なるM&Aの仲介にとどまらず、クライアント企業の企業価値向上に向けたトータルサポート体制を築き上げたことも渡辺氏の功績です。

GCA(現フーリハン・ローキー)では、世界24拠点で展開するグローバルなネットワークを活かし、質の高いアドバイザリー業務を提供しています。

戦略策定やPMI(M&A実行後の統合)を支援するコンサルティング業務やデューデリジェンス業務など、クライアントの多様なニーズに応える包括的なサービス基盤を確立しました。

第一三共やJERAなど国内大手企業での社外取締役歴任

渡辺氏は東芝だけでなく、日本の主要企業のガバナンス改革に大きく貢献しています。

これまでにユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)やマルホの社外取締役を務めたほか、2024年にはJERA、2025年6月には第一三共の社外取締役に就任しました。

豊富なM&A知見と経営経験を活かし、企業の透明性向上や指名委員会などの重要組織で変革を支えています。

渡辺章博の経営哲学や人となりがわかるエピソード

渡辺章博氏が長年にわたり第一線で結果を出し続け、多くのクライアントや財界から絶大な信頼を獲得している背景には、独自の経営哲学とプロフェッショナルとしての確固たる倫理観があります。

ここでは、彼の発言や行動から見えてくる人となりや、組織・仕事に対する考え方を深く掘り下げます。

「会社の看板ではなく個で勝負する」人材育成と仲間への想い


渡辺氏は、共に働くスタッフを単なる「社員」ではなく、同じ志を持つ「仲間」と呼び、バックオフィスを含めた全員がクライアントから感謝されるプロフェッショナルになることを求めています。彼が理想とするのは、組織や会社のブランド力に甘える働き方ではありません。

「ファームの名前ではなく、〇〇さんというあなたに頼みたい」と個人名で指名される存在になることが、真のプロの姿であると考えています。

また、常に顧客と真摯に向き合って価値を提供し続ければ、将来どのようなキャリアを選んだとしても信頼関係が循環するという、人間味溢れた組織観を持っています。

理念を体現する「実力主義」と規模に囚われない誠実さ

創業時からの理念である「For Client’s Best Interest(顧客の最善の利益)」について、渡辺氏は単に姿勢やスローガンとして掲げるだけでは意味がないと強調します。

最高の助言を行うためには、それを裏付ける高度なスキルと知識を絶えず磨き続けることが不可欠であるという考え方です。さらに、M&A業界に散見される大規模案件ばかりを優遇する風潮を厳しく戒めています。

案件の金額や派手さに左右されず、事前の下調べや地道な作業の一つひとつを完璧にこなし、顧客の戦略にとって真に価値がある仕事に全力で取り組む誠実さを徹底させています。

原体験と逆境から培われたプロフェッショナルへの覚悟

彼のプロとしての根底には、幼少期の記憶とキャリア初期の苦難の経験が深く息づいています。幼い頃に父親の勤務先の合併を通じて「M&A」を身近に感じ、偉人伝の読書を通じてリーダーシップのあり方を学んだことが彼のルーツです。

その後、キャリアの途中で独立を余儀なくされるような過渡期に直面した際、赤字企業の再建を支援して顧客から深く感謝されたことで、「人の役に立ち価値を創出すること」が自身の使命だと確信しました。

この体験が、自社を世界的なファームへ導いただけでなく、東芝をはじめとする大企業の改革を背負って立つ揺るぎない覚悟の礎となっています。

まとめ

渡辺章博氏は、日米の公認会計士資格とグローバルな実務経験を武器に、日本のM&A業界の発展に大きく貢献してきた真のプロフェッショナルです。

完全独立型のファームであるGCAを創業し、「For Client’s Best Interest」という哲学のもとで数々の企業の成長戦略を後押ししてきました。現在は世界的投資銀行であるフーリハン・ローキーの会長として、また東芝をはじめとする日本を代表する大企業の社外取締役として、その手腕をいかんなく発揮しています。

日本企業の価値向上に挑み続ける渡辺章博氏の今後のさらなる活躍から目が離せません。